2012年2月19日日曜日

カメラマン、写真家、フォトグラファー?いや、カメコです!



Photographer Dennis Stock 



『写真を撮る人』のコトって、どう呼んでいます?

普通は『カメラマン』なんて、呼んでいますが『カメラマン』はどうやら和製英語らしいのです。

英語圏では『Photographer(フォトグラファー)』が写真を撮る人で、『Cameraman(カメラマン)』はムービーカメラマンの意味なんだとか。

しかし写真の発祥は西洋社会ですから、このくらい間違えたほうが日本らしいというか。

それにしてもカメラマンとかフォトグラファーだとか、写真家だとか、同じような事をしている人達なのに、まったくややこしい。

日本人って一つの物や事柄を『一物多名称』でレトリックして、こねくり回す種族だから仕方ないかもしれません。

『一物多名称』をポジティブに考えると、「情緒豊かな表現」で、ネガティブに考えると「回りくどい」って感じでしょうか?

そんな中『写真を撮る人』は前出以外にも、実に豊かなラインナップで表現されています。

『写真を撮る人』を適当に列挙してみました。

・カメラマン
・フォトグラファー
・写真家
・写真作家
・先生
・カメラ
・キャメラマン
・スチール
・写真技能士
・記録
・写真屋
・社カメ
・写真部
・撮影スタッフ
・カメコ(カメラ小僧)
・カメオタ(カメラおたく)
・カメ女(カメラ女子)
・シャッターマン

ずいぶん多くの言い方があるのですが、それぞれ名称別に使用方法を解説します。

カメラマン
『写真を撮る人』の名称で一番使われているものが『カメラマン』です。
前出の和製英語ではあるものの、プロアマ問わず、抜群の使用頻度を誇っているのではないでしょうか?プロの場合の『カメラマン』は職人的な意味合いが強く、前部に「報道」や「スポーツ」や「ファッション」、「商品」、「スタジオ」など付けると複合語として、専門性のある職種もあらわす名称になっています。日本では『写真を撮る人』の代名詞と言ってよいでしょう。


・フォトグラファー
『カメラマン』の次にプロが良く使う『写真を撮る人』の名称ですが、カメラマンの和製英語に対して、本来の名称が『フォトグラファー』です。主にプロが使い、完全なアマチュアで『フォトグラファー』を名乗っている方はあまりいないような気がします。職人的気質の『カメラマン』よりもクリエイティブな雰囲気を出したい、オシャレなプロが良く使う傾向があります。
例えば「ファッション・フォトグラファー」などはありますが、『学校カメラマン』はあったとしても、『学校フォトグラファー』がないのは、学校写真にオシャレが求められていないからです。
『フォトグラファー』のマストアイテムは外車とapple、海外メーカーのカメラバッグです。
近くなのに電車移動で国内メーカーのカメラバッグ使いはフォトグラファーと呼ぶにはチョット・・・
名刺をもらった際には、ソコのところをチェックすると面白いカモ。

写真家
『写真を撮る人』の『カメラマン』、『フォトグラファー』、『写真家』の三段活用の最上部の名称が『写真家』です。クリエイティブ系の『フォトグラファー』よりも更にアート&カリスマクラスの雰囲気を醸し出します。自らが企画を立てて作品を発表します。仮に顧客に発注された写真撮影だとしてもクライアントとの力関係は、「顧客<写真家」の図式で成り立っている場合が多く、撮影チームをまとめ上げ『写真家』がリーダーとなって進行していきます。
しかしアマチュアにも『写真家』は多く、写真以外の仕事を持ちながら、自らが企画した内容で写真撮影を行って、写真展開催や写真集の発表をしています。この場合の経費は殆ど『写真家』の持ち出しです。写真展のプリントと額装、DM制作に数万~数十万円。写真集制作に数十万~数百万円が費用として必要なようです。中にはスポンサーを見つけ経費を捻出している『写真家』もいます。


写真作家
写真によるアート制作を行っている人が『写真作家』です。『写真家』もアート系ですが、『写真作家』は写真を使ったアートそのものを制作し発表します。語源として『写真家』のほうが古く、後から『写真作家』が出現しているのは、日本では写真がアートとして認知されたのが近年ため、『写真家』との差別付けが必要になり『写真作家』が出現しています。しかし自称『写真作家』には不思議ちゃん系も多いのが実際のところです。


先生
写真家、写真作家の気分を良くさせるために使う名称です。
写真は気分によって出来不出来に多大な影響がある制作物ですので、人使いの上手なクライアントが『写真家』の気分を持ち上げるためよく使います。
一昔前はよく使っていたようですが、最近はあまり聞きません。
また、写真家やカメラマンのアシスタントが「先生」と言う場合もあります。
でも最近は徒弟制度が崩壊していますので、「先生」といってもらえる撮影者も少なくなっています。
徒弟制度の崩壊理由は写真学校の普及や、薄給に対してのリターンが見込めない事や、写真家にアシを雇う財力がなくなったからです。


・カメラ
上記の『カメラマン』の『マン』を端折っただけの名称ですが、結構使われている方も多くいます。

使用事例 : 
1、編集者 「本日撮影させますカメラの○○です。」(俺はカメラマンでカメラじゃねー!ブツブツ)
2、友人A  「ちょっと聞きたいんだけど~○○ってカメラやってたよね。」


キャメラマン
自分の経験上、ご年配の方がよく使われる名称です。ジェネレーションによっての名称も変化しています。またムービー業界では撮影者のことをキャメラマンと呼んでいます。


・スチール
動画の現場でムービーカメラマンと差別付けするために呼ばれている名称です。

使用事例 : 
1、ムービーのディレクター 「あの画に入っているスチールどかせ!」
2、「はじめまして今日の現場でご一緒させていただきます、スチールの○○です。」


写真技能士
『写真を撮る人』で唯一、国家資格になっているものが『写真技能士』です。
最近ではデジタルも試験項目に入っているようです。
しかし営業写真館以外ではその使い道はまったくありません。
元来『カメラマン』は個人の能力で成り立っているものですが、写真館では個人が売りになる商材ではないので、『写真技能士』なる資格で差別付けしています。
また写真専門学校では看板になる取得可能な資格が少ないので、『写真技能士』で客(生徒)を釣っているようですが、この国家資格を取っても、写真撮影の能力がプラスになるとは思えないので注意してください。

就活で資格にすがりたい方にお勧めです。


・記録
イベント会場等で写真を撮影する、カメラマンの別名称です。

使用事例 : 「記録の○○さん、お弁当食べた?」「記録の○○さんあれも撮っておいて下さい。」
進行表に自分の名前が無いと思ったカメラマンの皆さん、記録と書かれていることがあります。


写真屋(さん)
写真館や遠足の同行、運動会のカメラマン、街のプリント屋さんの別名称です。
『写真屋さん』と使うのが通常の使用方法です。
『写真屋』と呼び捨てする場合は商業カメラマン全般を見下すときに使用します。
当の『写真屋』がいない状況で使いましょう。


・社カメ
『社員のカメラマン』の略語で、社員とは言っているものの正社員だけではなく、契約社員も含まれます。新聞社や出版社、広告代理店、スタジオに勤務しています。
『社カメ』の頂点は新聞社の社員カメラマンと大手広告代理店の社員カメラマンです。
新聞社カメラマンはハイヤー移動や高給の高待遇で知られますが、新聞のビジネスモデルが破綻しかけている昨今では徐々に高待遇が無くなって来ているようです。また広告代理店のカメラマンは学閥化が進んでいますので入り込むには大学を選ぶしかないようです。
『社カメ』の反対語は『フリーカメラマン』。


・写真部
高校や大学でのクラブ、写真部を指します。
また社カメの在籍している会社内での呼ばれ方も写真部です。


・撮影スタッフ
男女雇用均等法では求人の際、『カメラマン』ではなく『撮影スタッフ』や『カメラマン(男女)』として表記するのが正式だそうです。
写真では無いのですが、ムービーのスタッフをまとめて呼ぶ場合も『撮影スタッフ』と言います。


カメコ(カメラ小僧
カメラ小僧の略語として一般化したものが『カメコ』です。
カメラ小僧はカメラ好きを指していましたが『カメコ』はオタク系写真撮影者を指します。
コスプレ系ではカメラマンの事を『カメコ』呼ぶのが一般的になっていますが、ある程度のキャリアの商業カメラマンに『カメコ』と言ってしまうと、気分を害する場合があるので、使用方法には注意が必要です。

使用事例 : 
イベントコンパニオンA 「あのカメコ、マジキモ!『ドコ撮ってんだヨ!』って感じ。」
イベントコンパニオンB 「でも、大切なお客でもあるんだけどね。」


カメオタ(カメラおたく)
カメラが大好きな人を指しますが、イコール写真が大好きなわけではありません。特にシャッター音やカメラの重さ、質感、機能を最優先しています。パソオタ(パソコンオタク)と似たような雰囲気を醸し出し、ステレオタイプのファッションとして、バンダナとカメラマンベストが必須アイテムです。
またカメオタに写真論を話しても共感してもらえない場合が多く、スティーグリッツが云々、高橋周平が云々と言っても理解してもらえません。
あくまでも、機械としてのカメラを共通言語として会話しましょう。
オリンパスやペンタックスの悪口は絶対に厳禁です。


・カメ女(カメラ女子)
写真好きな女の子をカメ女と言います。カメコやカメオタとの相違点はファッションから来ているところでしょうか。さらに『カメコ』も『カメオタ』もカメラに依存していますが、カメ女はカメラではなく写真に価値を見出しているところが圧倒的な違いです。
源流は90年代の渋谷で、ちょい古な一眼レフを斜めがけしているところから、ファッションとして始まりました。一般的には桑沢のオシャレ女子が始まりと言われていますが、実際のところは90年代中期、渋谷にある日本写真芸術専門学校の在学生が男子率よりも女子率のほうが上回った時期とリンクしていることから、桑沢発祥説よりも日本写真芸術専門学校発祥説の方が有力となっています。
現在は数種類の「カメ女雑誌」も発行され、女子用のストラップやカメラバッグが発売されるまでになっています。


・シャッターマン
フィルム撮影が盛んだった前世紀に主に使われていました。メーカーの新製品のリリース写真は大量に同じ写真を作る必要がありました。その際、撮影後のフィルムをデュープ(複製)するのが一般的でしたが、デュープよりも安価に写真を作るため、同じ写真を数百カット撮影していました。
その際シャッターを切る(レリーズを押す)人間はアシスタント等が行っていましたが、本当にシャッターを押すだけなので、シャッターマンと呼ばれていました。
しかし、フィルムチェンジもピンの確認も、露出確認もしていますので、純粋にシャッターを押すだけではありません。
また、隠語としてデザイナーや編集者、デレクターの指示でしか写真を撮影しないカメラマンもシャッターマンと呼ばれています。


以上で終了ですが、
自分も『写真屋』とか『シャッターマン』と言われないように気をつけたいところです。

また、この他にもありましたらば是非ご連絡下さい。

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